高圧ガスは、高圧ガス保安法において状態と性質の2つの観点から分類されています。
状態による分類 | 性質による分類 |
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それぞれ異なる取り扱い基準が定められているため、ガスごとの特徴を正確に把握しておくことが重要です。
本記事では、高圧ガスを分類・理解するうえで重要となる「ガスの状態」と「ガスの性質」という2つの視点から、高圧ガスの種類と特徴をわかりやすく解説します。
なお、「高圧ガスの概要」については下記記事もあわせてご確認ください。
目次
高圧ガスは、高圧ガス保安法において状態と性質の2つの観点から分類されています。
状態による分類 | 性質による分類 |
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それぞれ異なる取り扱い基準が定められているため、ガスごとの特徴を正確に把握しておくことが重要です。
高圧ガスは物理的な状態に基づいて以下の3つに分類されます。
分類 | 容器内の状態 | 代表例 |
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圧縮ガス | 気体のまま高圧で圧縮 | 酸素、窒素、水素など |
液化ガス | 圧力をかけて液体状態で保存 | プロパン、炭酸ガス、アンモニアなど |
溶解ガス | 多孔質物質に溶解させて保存 | アセチレンなど |
(参考)東京都環境局|高圧ガスとは
容器の中でガスがどのような形で保存されているかによる分け方で、保存方法や取り扱い方法がそれぞれ異なります。
圧縮ガスの特長を図表等にまとめて、解説します。
容器内の状態 | 気体のまま高圧で圧縮 |
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代表的な 圧縮ガス |
酸素、窒素、水素など |
圧縮ガスとは、常用温度において圧力が1MPa以上となるガスのことです。
気体を高い圧力で押し縮めて容器に充填したもので、温度が変わっても液体にならず気体のままである点が特徴です。
病院の酸素ボンベや工場で使われる窒素ガスなどが代表例で、使用時は調整器(レギュレーター)を使って適切な圧力に下げてから利用します。
注意点としては、圧縮ガスは温度の変化によって容器内の圧力が大きく変動しやすいことです。
そのため、温度管理をしっかり行い、調整器(レギュレーター)で圧力を適切に調整することが重要です。
液化ガスの特長を図表等にまとめて、解説します。
容器内の状態 | 加圧や冷却によって液体の状態で保存 |
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代表的な 液化ガス |
プロパン、炭酸ガス、アンモニアなど |
液化ガスとは、気体に圧力をかけたり温度を下げたりすることで液体の状態にし、容器に保存できるようにしたガスのことです。
「高圧ガス保安法」では、以下のいずれかに該当するものが液化ガスとして定義されています。
液体にすることで同じ容器内により多くのガスを充填できるというメリットがあり、使用時には圧力を下げて再び気体に戻して利用します。
この性質を活かして大量のガスを効率よく供給する用途に適しており、プロパンガスやスプレー缶のガス、冷蔵庫の冷媒など日常生活や産業分野で広く使われています。
溶解ガスの特長を図表等にまとめて、解説します。
容器内の状態 | 多孔質物質に溶解させて保存 |
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代表的な 溶解ガス |
アセチレンなど |
溶解ガスとは、多孔質物質にガスを溶解させて安全に保存するガスのことです。
最も代表的なものがアセチレンガスです。
高圧にすると爆発の危険性が高まるため、容器内にアセトンという液体を染み込ませた多孔質物質を入れ、その中にアセチレンガスを溶解させて保存します。
この方法により、危険なガスでも安全に取り扱うことが可能になります。
主に金属の溶接や切断作業で使用され、酸素ガスと組み合わせることで高温の炎を作り出すことが可能です。
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高圧ガスは化学的な性質に基づいて、大きく5つに分類されます。
この分類は安全管理において重要で、それぞれ異なる危険性を持つため、取り扱い方法や保管方法が厳格に定められています。
分類 | 主な特徴(危険性等) | 代表例 |
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可燃性 ガス |
燃焼・爆発性がある | 水素、プロパン、アセチレンなど |
毒性ガス | 健康被害を及ぼす | アンモニア、塩素、一酸化炭など |
支燃性 ガス |
他の物質の燃焼を助ける | 酸素、亜酸化窒素、塩素など |
不活性 ガス |
化学反応しにくい | 窒素、アルゴン、ヘリウムなど |
特定高圧 ガス |
自然発火や爆発、強い毒性などの危険性を持つ | モノシラン、ジシラン、圧縮水素、圧縮天然ガス、液化酸素など |
それぞれについて解説します。
可燃性ガスの特長を図表等にまとめて、解説します。
主な特徴 | 燃焼・爆発性がある |
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代表的な 可燃性ガス |
水素、プロパン、アセチレンなど |
主な用途 | 燃料、工業用など |
注意点 | 爆発事故が起きやすい |
可燃性ガスとは「空気中または酸素中で燃焼(光や熱を発して激しく酸化)しやすい性質を持つ気体」のことです。
水素やプロパン、アセチレンなどが代表的で、空気中の酸素と混合すると燃焼や爆発を起こす危険があります。
特に水素やアセチレンは燃焼範囲が広く、少量でも危険なため厳重な管理が必要です。
取り扱い時は火気を避け、適切な換気を行うことが重要で、漏洩検知器の設置も義務付けられています。
毒性ガスの特長を図表等にまとめて、解説します。
主な特徴 | 健康被害を及ぼす |
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代表的な 毒性ガス |
アンモニア、塩素、一酸化炭素など |
主な用途 | 工業用、半導体など |
注意点 | 厳重な管理が必要 |
毒性ガスとは「人間が吸引したり、触れたりすると人体に害を及ぼすガス」です。
アンモニアや塩素、一酸化炭素などが該当し、空気中に一定濃度以上存在すると健康被害や生命の危険を引き起こします。
毒性の強さは許容濃度で判断され、この値が低いほど危険性が高いとされています。
取り扱い時は専用の防護具着用が必須で、漏洩時の緊急対応計画も事前に準備しておく必要があります。
支援性ガスの特長を図表等にまとめて、解説します。
主な特徴 | 他の物質の燃焼を助ける |
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代表的な 支燃性ガス |
酸素、亜酸化窒素、塩素など |
主な用途 | 医療、工業用など |
注意点 | 火災拡大に注意 |
支燃性ガスとは「他の物質の燃焼を支える性質を持つガス」のことです。
酸素や亜酸化窒素などが代表的で、支燃性ガス自体は燃えませんが他の可燃物の燃焼を促進する働きがあります。
特に酸素は空気中の濃度が高くなると、普段燃えにくいものでも激しく燃焼するため注意が必要です。
医療現場や工業用途で広く使用されており、可燃性ガスとの接触を避け、油脂類などの可燃物から離して保管することが重要です。
不活性ガスの特長を図表等にまとめて、解説します。
主な特徴 | 化学反応しにくい |
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代表的な 不活性ガス |
窒素、アルゴン、ヘリウムなど |
主な用途 | 防爆、食品保存、溶接用など |
注意点 | 火災拡大に注意 |
不活性ガスとは「化学的に安定しており他の物質と反応しにくいガス」のことです。
窒素やアルゴン、ヘリウムなどが代表的で、燃焼や爆発の危険性が低く比較的安全に取り扱えます。
酸化防止や雰囲気ガスとして金属加工や半導体製造で使用されるほか、溶接時の保護ガスとしても利用されます。
ただし密閉空間で大量に漏洩すると酸欠事故の原因となるため、換気設備の確保と酸素濃度の監視が必要です。
特定不活性ガスとは「不活性ガスのうち、主に冷媒として使われるフルオロカーボン系のガス」を指します。
温度60℃・圧力0Paの条件で着火した場合に火炎が広がる性質(火炎伝播)を持ち、通常の不活性ガスとは異なり「わずかに燃える性質(微燃性)」があります。
そのため、法令上は「不活性ガス」に分類されながらも、「特定不活性ガス」として別途区分され、取り扱いには注意が必要です。
特定高圧ガスの特長を図表等にまとめて、解説します。
主な特徴 | 自然発火性、分解爆発性、高毒性などの危険性を持つ |
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代表的な 特定高圧ガス |
モノシラン、ジシランなどの特殊高圧ガスや圧縮水素、圧縮天然ガス、液化酸素など |
主な用途 | 半導体など |
注意点 | 特別な管理が必要 |
特定高圧ガスとは「高圧ガス保安法施行令第7条により、『使用時に災害が発生するおそれがあるもの』または『一定量を扱うことで公共の安全に影響を及ぼす可能性があるもの』として定められた高圧ガス」のことです。
他の高圧ガスに比べてリスクが高いため、より厳格な法的規制と管理体制が求められます。
特定高圧ガスは、以下の2つに分類されます。
特殊高圧ガスは「極めて高い危険性を持つ7種類のガス」で、貯蔵量に関係なく常に特定高圧ガスとして扱われます。
【特殊高圧ガスの7種】
上記のガスは、「自然発火しやすい」「分解して爆発しやすい」「強い毒性がある」といった性質を持ち、主に半導体製造などの産業用途で使用されています。
取り扱いには高度なリスク管理が求められ、都道府県知事への届出や、厳格な技術基準・保安体制の整備が義務付けられています。
以下のガスは、一定量以上を貯蔵または消費する場合に限り、特定高圧ガスとして扱われます。
【対象となるガス】
上記ガスは通常の産業活動でも使用されるガスですが、大量に取り扱う場合は災害リスクが高まるため、特定高圧ガスとして規制対象となります。
使用・保管にあたっては、届出や保安監督者の選任、保安計画の策定など、法令に基づく管理が必要です。
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