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高圧ガス保安法における「輸送(移動)」について|発注者の役割と罰則・リスクをわかりやすく解説

高圧ガス保安法における「輸送(移動)」について|発注者の役割と罰則・リスクをわかりやすく解説

本記事では高圧ガス輸送の依頼を検討している担当者の方に向けて、「高圧ガス保安法の概要」及び輸送(移動)依頼する「発注者が担う役割」と違反した場合の「罰則・リスク」について、できるだけ工夫してわかりやすく解説しています。

なお、「高圧ガス輸送」の概要については下記記事をご覧ください。

1.高圧ガス保安法とは

高圧ガス保安法とは、

「高圧ガスによる災害を防止し、公共の安全を確保すること」を目的とした法律です。

高圧ガスは、扱いを間違えると爆発や漏えいなどの大事故につながる危険性があります。
そのため、国は非常に厳しいルールを設けて規制しています。

参考:経済産業省|法令・ガイドライン

1-1.高圧ガス関連の法令体系

高圧ガスに関する法令は、「法律→政令→省令(規則)→告示・例示基準等」の順に階層化されています。
その中で、根拠となる最上位の法律が「高圧ガス保安法」です。

<図 高圧ガス関連の法令体系>

図 高圧ガス関連の法令体系
【高圧ガス関連の法令体系】
区分 法令 役割
法律
  • 高圧ガス保安法
  • 大枠のルール(目的・基本義務・罰則など)
政令
  • 高圧ガス保安法施行令
  • 高圧ガス保安法関係手数料令
  • 法律を実施するための詳細(対象範囲・手続きの枠組みなど)
省令
  • 一般高圧ガス保安規則(一般則)
  • コンビナート等保安規則(コンビ則)
  • 液化石油ガス保安規則(液石則)
  • 冷凍保安規則(冷凍則)
  • 容器保安規則 など
  • 実務の具体ルール(技術基準・運用基準)
告示・
例示基準等
  • 各種告示
  • 例示基準
  • 通達・ガイドライン など
  • 技術基準を「現場でどう満たすか」の具体例(運用の拠り所)

下位の政令・省令は、高圧ガス保安法を具体的に運用するために「対象」「手続き」「技術基準(安全ルール)」を定めており、役割が異なります。

それぞれの法令・ガイドラインについては、経済産業省のサイトにまとめられています。

参考:経済産業省|法令・ガイドライン

1-2.高圧ガス保安法の対象

高圧ガス保安法では、以下のすべてが規制対象です。
ガスの製造や貯蔵だけではなく、ガスを運ぶ「移動」も、高圧ガス保安法の対象となります。

【高圧ガス保安法の規制対象】
規制対象 概要
製造
(ガスを作る)
圧縮・液化等により高圧ガスを生成する行為。
規模に応じて都道府県知事への許可または届出が必要になる。
貯蔵
(ガスを保管する)
貯蔵量により規制が段階的に強化される。
第一種貯蔵所は原則として1,000m³以上、第二種貯蔵所は300m³以上で届出対象。
販売
(ガスを売る)
事前届出制。
販売所によっては「高圧ガス販売主任者」の選任が必要になる場合がある。
移動
(ガスを運ぶ)
容器の固定、表示、運搬方法などについて技術基準が定められている。
一定の場合には移動監視者の同乗等が必要となる。
消費
(ガスを使う)
特定高圧ガスを一定量以上貯蔵して消費する場合、事前届出が必要。
廃棄
(ガスを捨てる)
ガスの性質に応じた安全な方法で高圧ガスを廃棄する義務がある。
容器の製造
・取扱い
容器の製造許可、定期検査(容器再検査)、表示義務などが定められている。

それぞれの規制については、経済産業省のサイトにまとめられています。

参考:経済産業省|高圧ガスに関する規制について



また、高圧ガスの輸送(移動)での「移動監視者の同乗」や「規制の詳細」について下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

1-3.高圧ガスの「定義」と「種類」

高圧ガス保安法では、一定以上の圧力を持つガスを「高圧ガス」と定義しています。

高圧ガスは「状態」と「性質」の2つの観点から分類されており、ガスの状態による分類では「圧縮ガス」「液化ガス」「溶解ガス」などの種類に分けられます。
また、「性質」では次のような分類があります。

【高圧ガスの種類】
分類 主な特徴
(危険性等)
代表例
可燃性ガス 燃焼・爆発性がある 水素、プロパン、アセチレンなど
毒性ガス 健康被害を及ぼす アンモニア、塩素、一酸化炭素など
支燃性ガス 他の物質の燃焼を助ける 酸素、亜酸化窒素、塩素など
不活性ガス 化学反応しにくい 窒素、アルゴン、ヘリウムなど
特定高圧ガス 自然発火や爆発、強い毒性などの危険性を持つ モノシラン、ジシラン、圧縮水素、圧縮天然ガス、液化酸素など

参考:経済産業省|法令・ガイドライン「高圧ガス保安法等」

上記分類は安全管理において重要で、それぞれ異なる危険性を持つため、取り扱い方法や保管方法が厳格に定められています。


「可燃性ガス」などのそれぞれの特徴は以下の記事で詳しく解説しています。

1-4.事業者区分・資格制度・適用除外について

高圧ガス保安法では、製造規模に応じて「第一種製造者」「第二種製造者」に区分され、保安統括者・保安監督者・移動監視者などの資格制度が設けられています。

例えば、高圧ガスを輸送する際、「種類」や「量」によっては「移動監視者」の有資格者の乗車が必要になります。

なお、以下のような場合は高圧ガス保安法の適用が除外されます。

高圧ガス保安法の適用が除外されるケース

  • 高圧ボイラーおよびその導管内の高圧蒸気
  • 鉄道車両のエアコン内の高圧ガス
  • 船舶安全法の適用を受ける船舶内の高圧ガス など

事業者区分・資格制度・適用除外の詳細については下記サイトをご覧ください。

「事業者区分」について:経済産業省|高圧ガスに関する規制について

「資格制度」について:高圧ガス保安協会|国家資格の概要及び職務範囲

「適用除外」について:経済産業省|スマート化に向けた規制対象の再整理について

2.高圧ガスの輸送(移動)依頼時に発注者が担う役割

高圧ガスの輸送では、実際の移動方法や技術基準への適合は、法令上は主として移動を行う側で確認されます。
一方で、発注者がガスの内容や容器の状態を十分に把握しないまま依頼すると、輸送会社が適切な判断をしにくくなり、事故や受託不可の原因になるおそれがあります。

そこで、発注者としては次の事項を事前に確認・共有しておくことが実務上重要です。

輸送依頼時に発注者が担う役割

  • 高圧ガスの情報を正しく伝える
  • 緊急時に備え、連絡先を整理・共有しておく
  • 容器の状態を確認して渡す

それぞれについて解説します。

2-1.高圧ガスの情報を正しく伝える

発注者は輸送会社に対して、高圧ガスの名称・性状・取扱い上の注意点などを正確に伝える必要があります。

輸送会社へ伝えるべき情報は、最低でも次の項目です。

最低でも伝えるべき項目

  • ガスの名称(できれば正式名称)
  • 性状(可燃性、毒性、支燃性など)
  • 数量(本数、容器サイズ、充てん量、総量)
  • 荷姿・取扱い条件(横積み不可、温度条件、混載可否など)

情報が曖昧だと、「適切な積載方法が取れない」「緊急時に初動が遅れる」「そもそも運べない」といったトラブルにつながります。

2-1-1.どのガスかわからない場合はSDS(安全データシート)を用意する

「品名はわかるけど、ガスの性状や危険性を説明できない」「混合ガスで成分の詳細まではわからない」など、内容物に不確実性がある場合は、「SDS(安全データシート)」を用意して輸送会社へ共有しましょう。

SDSがあると、

  • 危険性の種類(可燃、毒性、酸化性など)
  • 取り扱いの注意点(換気、火気、温度など)
  • 緊急時の応急措置や初動の方向性

といった点が輸送会社側で判断しやすくなります。

2-2.緊急時に備え、連絡先を整理・共有しておく

事故時の影響が大きい高圧ガスの輸送では、発注者が緊急連絡先を記載した書面を輸送会社側に渡しておくことが重要です。

発注者側で準備すべきポイントは、下記のとおりです。

発注者側で準備すべきポイント

  • 24時間連絡が取れる電話番号(当番・転送含む)
  • 不通時の代替連絡先(第2連絡先など)
  • 連絡を受けたときに即答できる情報(ガス名、本数、性状、積載状況、納品先、担当部署など)

2-3.容器の状態を確認して渡す

ガスが入った容器(ボンベやタンク等)が、所定の基準を満たしているかを確認して引き渡すことも、発注者にとって重要な役割です。
容器状態が悪いと、輸送中の漏えい・転倒・バルブ破損など、重大事故につながります。

最低限、下記の点は出荷前に確認しましょう。

確認すべき容器の状態

  • 容器検査の期限が切れていないか
  • 容器本体に損傷・腐食・変形がないか
  • バルブに異常がないか
  • 保護キャップ(またはプロテクター)が適切についているか
  • 表示(内容物・注意事項)が読める状態か

上記が不十分な状態でトラックに積載すると、法令違反になる可能性もあるので注意が必要です。

サクラ運送に「高圧ガス・危険物の輸送」を相談・依頼する

3.見落としがちな高圧ガス 例

高圧ガスの輸送依頼でトラブルが起きやすいのは、「空だから安全」と思い込んだり、「一見すると普通の荷物」に見えたりするケースです。

見落としがちな高圧ガス 例

  • 空ボンベ(残ガス容器)
  • スプレー缶(エアゾール製品)
  • 小型カートリッジ類・ガス内蔵部品 など

上記のような荷物が高圧ガスに該当するかどうかを、発注者が自分で断定する必要はありません。
SDSや仕様書など、専門の輸送会社が判断できる情報を揃えて、事前に確認するのが確実です。

3-1.「空ボンベ(残ガス容器)」の取り扱い

高圧ガス保安法では、ボンベの状態により下記のように区分されています。

  • ガスが充てんされた状態のボンベ:「充てん容器」(満タン・使用途中を含む)
  • 使い終わった後のボンベ:「残ガス容器」(外見上は空に見える)

重要なのは、外見上は空に見えても、容器内には圧力が残っている可能性があるという点です。
したがって、残ガス容器であっても、充てん容器と同様の法令基準を満たして輸送する必要があります。

3-2.「スプレー缶(エアゾール製品)」の取り扱い

工業用・一般用を問わず、スプレー缶は発注者側で見落としがちな代表例です。

スプレー缶は内部がガスで加圧されているため、製品や数によっては高圧ガス保安法の対象となる場合があります。
また、高圧ガスの対象外であっても、消防法(危険物)など別の規制に該当するケースがあるため、一般貨物扱いで輸送依頼するのは注意が必要です。

3-3.その他の見落とし例

空ボンベやスプレー缶以外にも、高圧ガスに該当する可能性がある荷物があります。
具体例としては以下のとおりです。

【その他の見落とし例】
種類 具体例
小型カートリッジ類
  • CO₂カートリッジ(ソーダ用・エアガン用・救命具用など)
  • キャンプ用ガスカートリッジ(CB缶/OD缶)
  • タイヤ用パンク修理キットのガス缶 など
消火器・消火設備用の容器
  • CO₂消火器
  • ハロン代替ガス系消火器
  • 加圧式消火器 など
冷媒(フロン等)・空調機器まわり
  • 冷媒回収ボンベ(回収後の残ガス含む)
  • 冷媒缶(エアコン修理用の小缶)
  • 冷媒が入ったままの機器(業務用冷凍機・空調部品) など
二酸化炭素を使う製品
  • 炭酸ガスボンベ(飲食店用、ビールサーバー用)
  • 水草・水槽用CO₂ボンベ など

ただし、内容積や圧力によっては高圧ガス保安法の適用除外となる製品もあるので、よくわからない場合はSDS・仕様書を添えて輸送会社へ事前に確認しましょう。

4.発注者の責任範囲と違反時の罰則・リスク

高圧ガスの輸送では、法律上の責任が輸送会社だけにあるわけではありません。
発注者側にも罰則やリスクがあります。

4-1.法的リスク|拘禁刑・罰金、法人も対象になり得る

高圧ガス保安法には違反内容や態様によって異なりますが、下記のような拘禁刑や罰金の規定があります。

高圧ガス保安法 第八十一条
(省略)当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

引用:高圧ガス保安法


ただし、実際にどの罰則が適用されるかは、違反行為の内容、関与の程度、法令上の義務主体に応じて判断されます。
そのため、輸送を依頼する側としても、内容物や容器の状態を正確に把握し、輸送会社へ適切に情報共有することが重要です。

また、輸送を依頼した担当者だけでなく法人(会社)も処罰対象となり得る(いわゆる両罰規定)ため、現場のミスが会社のリスクに直結します。

4-2.事業リスク|信用失墜・取引停止・監査対応

実務でより大きいのは、法的罰則そのものよりも社会的信用へのダメージです。

例えば、「コスト削減のために不適切な輸送をしている」と見なされてしまうと、

  • 取引先からの信頼低下
  • 監査・是正要求(再発防止策の提出、委託先見直し)
  • 出荷停止や取引停止、入札への影響

といった形で、事業継続に影響が出ることがあります。

コンプライアンス(法令遵守)が重視される現代において、安全な輸送方法の選択はとても重要です。

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