本記事では、高圧ガスを性質で分類したときの一つ「支燃性ガス」について、定義や種類、輸送時の注意点等をわかりやすく解説します。
なお、「高圧ガスの種類」については下記記事をご覧ください。
1.支燃性ガスとは
支燃性ガスとは、
「他の物質の燃焼を支える性質を持つガス」のことです。
「助燃性ガス」とも呼ばれ、ガス自体が燃えるわけではありませんが、可燃物の燃焼を促進し、火災や爆発の危険性を高める場合があります。
なお、「支燃性ガス」という用語は「可燃性ガス」や「毒性ガス」と異なり、高圧ガス保安法や一般高圧ガス保安規則において明確に定義されているものではありません。
専門機関の教育テキストや法令の解説資料などで、ガスの性質を示す実務上の分類として用いられています。
1-1.支燃性ガスと可燃性ガスの違い
支燃性ガスと可燃性ガスはいずれも火災や爆発につながる危険性がありますが、燃焼における役割が異なります。
主な違いは以下のとおりです。
【支燃性ガスと可燃性ガスの違い】
| 項目 |
支燃性ガス |
可燃性ガス |
| 主な性質 |
他の物質の燃焼を支え、促進する |
ガス自体が燃焼する |
| 燃焼における役割 |
燃焼を助ける側 |
自ら燃焼する側 |
| 火災・爆発の危険性 |
可燃物を燃えやすくし、火災の拡大や爆発につながることがある |
空気や酸素と一定の割合で混ざり、着火すると火災や爆発につながることがある |
| 代表的なガス |
酸素・塩素・フッ素・オゾンなど |
水素・メタン・プロパン・アセチレンなど |
可燃性ガスについては下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
2.支燃性ガスの主な種類 一覧
「支燃性ガス」には法令上の明確な定義がないため、対象となるガスを網羅した公式な一覧はありません。
ただし、GHSにおいて「酸化性ガス」に分類され、他の物質の燃焼を促進する代表的なガスとして、以下が挙げられます。
【支燃性ガスの主な種類 一覧】
| ガス名 |
化学式 |
主な用途 |
併せ持つ危険性 |
| 酸素 |
O₂ |
医療(酸素吸入・麻酔補助) 食品(食肉・野菜の鮮色保持) 製鉄・金属加工(溶接・切断・製鋼) 化学・石油(酸化合成)等 |
高濃度・高圧下では、油脂類の発火や激しい燃焼を助長するおそれ |
亜酸化窒素 (一酸化二窒素) |
N₂O |
医療(麻酔・鎮痛) 食品(ホイップクリームの起泡剤) |
高温で分解し支燃性が増大 容器の加熱で爆発のおそれ |
| 一酸化窒素 |
NO |
医療(一酸化窒素吸入療法) |
毒性 |
| 二酸化窒素 |
NO₂ |
化学合成・酸化剤 |
毒性 |
| 塩素 |
Cl₂ |
水処理・殺菌・化学合成 |
毒性・腐食性 |
| オゾン |
O₃ |
殺菌・脱臭・水処理 |
強い毒性・不安定性(高濃度では分解・爆発のおそれ) |
| フッ素 |
F₂ |
半導体の洗浄・化学合成 |
強い毒性・反応性・腐食性 |
| 三フッ化窒素 |
NF₃ |
半導体・液晶の製造装置の洗浄・エッチング |
吸入有害・血液系等への有害性 |
| 三フッ化塩素 |
ClF₃ |
半導体製造装置の洗浄・エッチング |
毒性・強い腐食性・極めて強い反応性 |
参考:独立行政法人 製品評価技術基盤機構|NITE統合版GHS分類結果一覧
上記のうち、産業や医療などで広く使用されている代表的な支燃性ガスが酸素です。
一方、塩素やオゾン、フッ素などは、支燃性に加えて毒性や腐食性などの危険性も持っています。
そのため、支燃性ガスを取り扱う際は、燃焼を促進する性質だけでなく、それぞれのガスが持つ毒性や反応性なども確認し、性質に応じた安全対策を講じる必要があります。
3.支燃性ガスを輸送する際の注意点
支燃性ガスを輸送する際は、特に下記の点に注意しなければなりません。
<支燃性ガスを輸送する際の注意点>
- 「高圧ガス移動監視者」による監視が必要になる場合がある
- 他の高圧ガスや危険物との混載に注意する
- 油脂類や可燃物との接触を避ける
- ガスが滞留しないよう換気する
以下、それぞれの注意点について解説します。
3-1.「高圧ガス移動監視者」による監視が必要になる場合がある
酸素や毒性ガスなどを所定量以上輸送する場合は、法令上の資格要件を満たす者に、移動の状況を監視させなければなりません。
対象となる数量は、以下のとおりです。
【高圧ガス移動監視者による監視が必要な主な数量】
| 区分 |
対象ガス |
- 圧縮ガス
(容積300㎥以上)
- 液化ガス
(質量3,000㎏以上)
|
酸素 |
- 圧縮ガス
(容積100㎥以上)
- 液化ガス
(質量1,000㎏以上)
|
塩素、一酸化窒素、二酸化窒素、フッ素、三フッ化窒素、三フッ化塩素、オゾンなどの毒性ガス |
塩素やフッ素のように毒性を併せ持つガスは、毒性ガスとして、酸素よりも少ない量から移動監視の対象となります。
輸送の前に、ガスの法令上の区分や積載量が基準に該当しないかを必ず確認しておきましょう。
参考:一般高圧ガス保安規則 第49条・第50条
3-2.他の高圧ガスや危険物との混載に注意する
支燃性ガスと他の高圧ガスや危険物を混載して輸送する際は、細心の注意を払う必要があります。
<混載時の主な注意点>
- 消防法で定められた危険物とは、原則として一緒に運ばない
- 酸素と可燃性ガスを同じ車両に積載して移動する場合は、容器のバルブを相互に向き合わせないように配置する
- 塩素はアセチレンやアンモニア、水素と同じ車両に積むことが禁止されている
支燃性ガスは他の物質の燃焼を助長します。
混載する組み合わせによっては、火災や爆発の危険性が高まるおそれがあるため、積載方法や容器の配置には万全の配慮を払い、安全な状態で輸送することが不可欠です。
特に塩素とアンモニアは激しく反応し、有害な物質や爆発性を持つ物質が生成されるおそれがあります。
実際に混載する際は、ガスの種類や容器の内容積、危険物の類別などを個別にしっかり確認しましょう。
参考:一般高圧ガス保安規則 第50条
3-3.油脂類や可燃物との接触を避ける
一部の支燃性ガスは油脂類や可燃物と接触すると、条件によっては激しく反応し、発火や火災を引き起こすおそれがあります。
特に酸素を取り扱う場合は、作業着に付着した油分や、手袋・工具に残ったわずかな油汚れであっても、発火の原因になりかねません。
そのため、容器のバルブを操作したり工具を使用したりする際は、油分が付着していないことを事前に確認する必要があります。
なお、油脂類との反応性や必要な安全対策はガスによって異なるため、それぞれのガスの安全データシート(SDS)や供給事業者の取扱基準も確認しましょう。
3-4.ガスが滞留しないよう換気する
支燃性ガスが密閉された空間に漏れると、空気中の濃度が高まり、周囲の物質が燃えやすい状態になります。
酸素などの代表的な支燃性ガス自体は燃えませんが、高濃度の状態で可燃物や火種があると、通常よりも燃焼が激しくなり、火災や爆発につながるおそれがあります。
また、塩素やフッ素など、毒性や腐食性を併せ持つガスについては、火災だけでなく、中毒や化学熱傷などにも注意が必要です。
そのため、荷下ろしや保管を行う際はガスが滞留しないよう風通しのよい状態を保ち、十分に換気することが大切です。
なお、「高圧ガスの保管」については下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
サクラ運送は高圧ガス輸送の専門業者として、支燃性ガスの性質に応じた適切な輸送に対応しています。
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