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【わかりやすく解説】毒性ガスとは|定義や種類・漏えい時の対策・輸送時の注意点など

【わかりやすく解説】毒性ガスとは|定義や種類・漏えい時の対策・輸送時の注意点など

本記事では、ガスを性質で分類したときの一つ「毒性ガス」について、定義や種類、ガス漏えい時の対策、輸送時の注意点などをわかりやすく解説します。

なお、「高圧ガスの種類」については下記記事をご覧ください。

1.毒性ガスとは

毒性ガスとは

毒性ガスとは、

「人間が吸入したり、触れたりすると人体に害を及ぼすガス」の総称です。
高圧ガス保安法令では、一般高圧ガス保安規則に掲げられたガスなどが「毒性ガス」として定められています。

参考:一般高圧ガス保安規則

毒性ガスによる症状は、ガスの種類や濃度によって異なりますが、人体には主に以下のような影響があります。

毒性ガスによる人体への影響

  • 目・鼻・のどへの刺激
  • 呼吸困難
  • 頭痛・めまい
  • 意識障害 など

1-1.毒性ガスの定義

一般高圧ガス保安規則において、以下のいずれかに該当するガスを「毒性ガス」と定義しています。

毒性ガスの定義

  • 一般高圧ガス保安規則に掲げられている33種類のガス
  • 上記以外で、毒物及び劇物取締法第2条第1項に規定する「毒物」に該当するガス

毒性ガスの種類には、アンモニア、一酸化炭素、塩素、硫化水素、シアン化水素などが含まれます。

1-1-1.じょ限量(許容濃度)とは

じょ限量(許容濃度)とは、以下のように定義されています。

じょ限量(許容濃度)とは

有害ガスを含む環境で、労働者が中程度の作業を1日8時間・長期間繰り返しばく露されても健康に障害を及ぼさないガス濃度の限界値のことです。

高圧ガス保安法では、名称で個別指定されていないガスの毒性判断基準が、平成28年(2016年)11月1日の改正で「じょ限量200ppm以下」から「毒物及び劇物取締法上の毒物」該当性へと変更されました。
慢性毒性を前提とするじょ限量は、短時間の漏えいを想定する同法にはそぐわないとされたためです。

実際にガスの取り扱いを安全に行う場合は、安全データシート(SDS)や、最新の法令を確認しておきましょう。

参考:経済産業省|高圧ガス保安法関係法令の平成28年11月1日改正に関する解説及びQ&Aについて

1-2.毒性ガスが持つ性質

毒性ガスの危険性は、人体への毒性だけではありません。ガスの種類によって、火災・爆発を引き起こしたり、周囲の設備を傷つけたりする場合があります。

毒性ガスが持つ主な性質は、以下のとおりです。

毒性ガスが持つ性質

  • 可燃性:火気や火花に触れると、燃焼・爆発する
  • 酸化性:ほかの物質を燃えやすくし、火災を激しくする
  • 腐食性:皮膚や眼、金属などを傷める
  • 水との反応性:水分と反応して、熱や有害な物質を発生させる

2.毒性ガスの主な種類 一覧

「一般高圧ガス保安規則」に掲げられている、毒性ガス33種類を一覧で紹介します。

本記事では、毒性ガスを以下のように分けて紹介します。

  • 不燃性の毒性ガス:ガス自体に可燃性がないもの
  • 可燃性の毒性ガス:可燃性があるもの

※火災・爆発への注意点をわかりやすくするため2つに分けて紹介しますが、これは法令上の分類ではありません。
参考:一般高圧ガス保安規則

2-1.不燃性の毒性ガス一覧

不燃性の毒性ガスは、それ自体は可燃性を持たないものの、強い毒性や腐食性があり、吸入すると呼吸器系の炎症・神経障害を引き起こすものもあります。

塩素やふっ素のように酸化性が強く、ほかの物質と激しく反応することもあるため、火災・爆発の危険がないとは限りません。

不燃性の毒性ガスは以下のようなものがあります。

【不燃性の毒性ガス一覧】
ガス名 化学式 特徴
亜硫酸ガス(二酸化硫黄) SO₂ ・刺激臭があり、目や呼吸器を強く刺激する
塩素 Cl₂ ・常温で黄緑色
・毒性、腐食性、酸化性が強い
五フッ化ヒ素 AsF₅ ・強い眼刺激あり
・ばく露によって複数の臓器に影響を及ぼすおそれがある
五フッ化リン PF₅ ・有毒、腐食性あり
・水分と反応してフッ化水素などを生じる
三フッ化窒素 NF₃ ・無色の酸化性ガス
・吸入すると有害で、血液系や肝臓、腎臓に影響を及ぼすおそれがある
三フッ化ホウ素 BF₃ ・刺激臭があり、水分と反応して腐食性物質を生じる
三フッ化リン PF₃ ・無色の有毒ガス
・吸入すると生命に危険で、呼吸器への刺激や、反復ばく露による骨への障害のおそれがある
四フッ化硫黄 SF₄ ・水と激しく反応し、フッ化水素などを生じる
四フッ化ケイ素 SiF₄ ・湿った空気中で発煙し、水と反応して有毒、腐食性のフッ化水素などを生じる
ふっ素 F₂ ・淡黄色
・極めて強い酸化性、腐食性、毒性を持つ
ホスゲン COCl₂ ・猛毒
・吸入後、遅れて肺水腫などが起こる場合がある

参考:厚生労働省|職場のあんぜんサイト

2-2.可燃性の毒性ガス一覧

可燃性の毒性ガスは、人体に有害なだけでなく、空気中で燃焼・爆発するおそれがあります。

可燃性の毒性ガスには、アンモニアやシアン化水素など、以下のようなものがあります。

【可燃性の毒性ガス一覧】
ガス名 化学式 特徴
アクリロニトリル C₃H₃N ・引火性の高い液体、蒸気
・吸入や皮膚接触による毒性が強く、神経系、肝臓、腎臓、血液系への障害や発がんのおそれがある
アクロレイン C₃H₄O ・強い刺激臭を持つ引火性液体
・吸入毒性が極めて強く、皮膚、眼の重篤な損傷や呼吸器障害を引き起こす
アルシン AsH₃ ・極めて毒性の強い可燃性ガス
・吸入すると生命に危険で、特に血液や腎臓に重大な障害を生じるおそれがある
アンモニア NH₃ ・強い刺激臭を持つ可燃性ガス
・皮膚、眼に重篤な化学熱傷を起こし、吸入により呼吸器や中枢神経系を障害する
一酸化炭素 CO ・無色、無臭の可燃性ガス
・血液による酸素運搬を妨げ、頭痛、意識障害、窒息、死亡を引き起こすことがある
クロルメチル(クロロメタン) CH₃Cl ・極めて可燃性の高い液化ガス
・吸入すると有害で、中枢神経系や肝臓に障害を及ぼし、発がんのおそれも疑われている
クロロプレン C₄H₅Cl ・揮発性と引火性が高い液体
・吸入や皮膚接触で有毒であり、皮膚、眼、呼吸器を刺激する
酸化エチレン(エチレンオキシド) C₂H₄O ・極めて可燃性の高いガス
・急性毒性があり、遺伝性疾患、発がん、生殖への悪影響を及ぼすおそれがある
シアン化水素 HCN ・非常に毒性が強く、引火性もある
・細胞の酸素利用を妨げ、頭痛、混乱、けいれん、呼吸停止などを急速に引き起こす
ジエチルアミン C₄H₁₁N ・強いアンモニア臭を持つ引火性液体
・強アルカリ性で、皮膚、眼の化学熱傷や呼吸器障害を引き起こす
ジシラン Si₂H₆ ・極めて可燃性が高い液化ガス
・空気中で着火しやすく、漏えいすると火災、爆発を起こす危険がある
ジボラン B₂H₆ ・自然発火するおそれがある極めて可燃性の高いガス
・吸入すると生命に危険で、呼吸器系や神経系を障害する
セレン化水素 H₂Se ・極めて毒性の強い可燃性ガス
・吸入により呼吸器を強く障害し、反復ばく露では神経系や皮膚にも影響する
トリメチルアミン C₃H₉N ・魚のような強い臭いを持つ可燃性ガス
・強い腐食性があり、皮膚、眼の損傷や呼吸器、中枢神経系への障害を引き起こす
二硫化炭素 CS₂ ・極めて引火しやすく、蒸気が爆発性混合物をつくる
・中枢神経系、心血管系、腎臓を障害し、生殖毒性もある
ブロムメチル(ブロモメタン) CH₃Br ・可燃性と毒性を持つ液化ガス
・神経系、呼吸器、肝臓、腎臓などを障害し、オゾン層を破壊する性質もある
ベンゼン C₆H₆ ・引火性の高い液体
・発がん性や遺伝性疾患のおそれがあり、長期ばく露によって造血系などに障害を及ぼす
ホスフィン PH₃ ・極めて可燃性、毒性の高いガス
・吸入すると中枢神経系、心血管系、呼吸器、消化管を障害し、肺水腫や心停止に至ることがある
モノゲルマン(ゲルマン) GeH₄ ・可燃性で、空気と爆発性混合物を形成する有毒ガス
・主に半導体製造で使用され、吸入すると生命に危険となる場合がある
モノシラン(シラン) SiH₄ ・空気に触れると自然発火することがある極めて可燃性のガス
・吸入により気道を刺激し、反復ばく露では肺を障害するおそれがある
モノメチルアミン(メチルアミン) CH₃NH₂ ・極めて可燃性の高いガス
・強い刺激臭と腐食性があり、吸入すると呼吸器に障害を及ぼすおそれがある
硫化水素 H₂S ・腐卵臭を持つ可燃性、猛毒ガス
・高濃度では嗅覚が麻痺し、意識障害や呼吸停止を引き起こすおそれがある

参考:厚生労働省|職場のあんぜんサイト

2-2-1.可燃性を持つ毒性ガスは爆発にも注意

毒性ガスには、火気や静電気などの着火源に触れると、燃焼・爆発するおそれがあるものもあります。

ガスが燃焼・爆発する濃度の範囲を「爆発範囲」といい、その下限を「爆発下限界」、上限を「爆発上限界」といいます。

可燃性を持つ主な毒性ガスの爆発範囲は、以下のとおりです。

【毒性ガスの爆発範囲一覧】
ガス名 化学式 爆発下限界
(vol%)
爆発上限界
(vol%)
アンモニア NH₃ 15 28
一酸化炭素 CO 12.5 74.2
シアン化水素 HCN 5.6 40.0
硫化水素 H₂S 4.3 46
アルシン AsH₃ 4.5 78
ジシラン Si₂H₆ 1.0 100
ホスフィン PH₃ 1.6 約100

参考:厚生労働省|職場のあんぜんサイト

可燃性ガスの定義や爆発が起きる条件、ガスごとの爆発範囲については、以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

サクラ運送に「高圧ガス・危険物の輸送」を相談・依頼する

3.毒性ガス漏えい時の対策

毒性ガスを輸送中に漏えいした場合は、自身と周囲の安全確保・退避・通報を優先しましょう。

命を一番大切にし、周囲の方への呼びかけや関係各所への連絡など、以下の順に進めます。

毒性ガス漏えい時の対策

  1. 車両を火気や人混みから離れた安全な場所に移動・停止し、エンジンを切る
  2. 漏えい箇所に近づかず、周囲の人を風上へ避難させる
  3. 消防署(119)・警察署(110)へ通報し、運送会社や荷送人などの関係先に連絡する
  4. 可燃性を併せ持つ場合は、火気や電気火花などの着火源を避ける
  5. イエローカードに記載された応急措置に従う

漏えい箇所の処置は、ガスの性質を理解し、必要な訓練を受けたうえで、適切な防護具や資機材を備えた者が行います。

運転者に資格・専門知識のない場合は、単独で漏えい箇所を修理したり、漏えい容器を移動させたりせず、消防機関や警察、専門の防災事業者などの指示に従いましょう。

4.毒性ガスを輸送する際の注意点

毒性ガスを輸送する際は、高圧ガス保安法に基づいて以下の点に注意しなければなりません。

毒性ガスを輸送する際の注意点

  • 必要に応じて有資格者・専門知識を持つ者が対応する
  • 高圧ガス保安法令の移動基準を守る
  • 万が一に備え防護具を用意する
  • 安全な輸送ルートを選ぶ

また、容器の転倒・落下を防止し、充塡容器等の温度を40℃以下に保つ必要があります。

以下で、それぞれの注意点について解説します。

4-1.必要に応じて有資格者・専門知識を持つ者が対応する

毒性ガスを一定量以上輸送する場合は、高圧ガス移動監視者など資格要件を満たす者が同乗しなければなりません。

対象となる毒性ガスの量は以下のとおりです。

高圧ガス移動監視者の同乗が必要になる量

  • 圧縮毒性ガス:100m³以上
  • 液化毒性ガス:1,000kg以上

同乗が必要になる理由は、輸送中に異常や事故が発生した際に、適切な対応を行うためです。

輸送量が多いほど事故時の影響も大きくなるため、事前に対象数量を確認しておきましょう。

4-2.高圧ガス保安法令の移動基準を守る

毒性ガスを車両で運搬する際は「高圧ガス保安法」の移動基準を遵守する必要があります。

主な移動基準は以下のとおりです。

高圧ガス保安法令の移動基準

  • 一緒に運ぶガスや危険物の組み合わせを確認する
  • 事故時の応急措置などを記載した「イエローカード」を携帯する
  • マスク・手袋などの防護具を携帯する
  • 車両の前部および後部に「高圧ガス」の警戒標を掲げる

毒性ガスを輸送する際は、一緒に運ぶガスや危険物の組み合わせに注意しましょう。

例えば、高圧ガスの充塡容器は原則として、消防法上の危険物と同じ車両に混載できません。また、塩素の充塡容器などは、アセチレン・アンモニア・水素の充塡容器などと混載が禁止されています。

一部例外もありますが、輸送するガスや危険物の種類を確認し、基準に沿って積載・配置を決めることが重要です。

また、可燃性を持たない毒性ガスは、酸化性や他の物質と反応する可能性もあり、火災や爆発につながる可能性もあります。

参考:高圧ガス保安法令に係る移動基準

4-3.万が一に備え防護具を用意する

毒性ガスの輸送では、ガスの種類・状態に適した防護具を車両に備えておきましょう。

主な防護具は、以下のとおりです。

【主な防護具】
保護する部位 防護具 使用時の注意点
呼吸器 隔離式
防毒マスク
輸送する毒性ガスに適合する、全面形・高濃度用のものを選ぶ
空気呼吸器 多種類の毒性ガスや毒性の強いガスを輸送する場合などに使用する
皮膚・身体 化学防護服 ガスの性質や漏えい状況に適した素材・構造を選ぶ
化学防護
手袋
耐透過性・耐浸透性・耐劣化性を確認する
化学防護
長靴
薬品の付着・浸透を防げるものを選ぶ

毒性ガスを輸送する場合は、防毒マスクより呼吸用空気を供給する空気呼吸器が望ましいとされています。

防護具は乗務員に応じた数量を用意し、月1回以上の点検と、いつでも使用できる状態にしておくことが重要です。

また、防護具だけでなく、バルブの開閉用工具など漏えい時の応急資材も準備しておきましょう。

参考:厚生労働省|使用すべき保護具一覧

4-4.安全な輸送ルートを選ぶ

毒性ガスの輸送では、事故・漏えいが発生した場合も考慮して、安全性の高いルートを選ぶのが重要です。

輸送ルートを決める際のポイント

  • 繁華街などの人混みを避ける
  • 渋滞しやすい道路をできる限り避ける
  • 交通量が少なく、安全性の高い道路を選ぶ

毒性ガスが漏えいすると、運転者だけでなく、周囲の方にも健康被害を及ぼすおそれがあります。

万が一事故が発生した場合の被害も想定し、周囲への影響を抑えられるよう輸送ルートを検討しましょう。
繁華街に加え学校や住宅街など、できるだけ周囲への影響が少ない経路を選ぶ必要があります。

また、食事などのやむを得ない場合を除き、原則として運転者または移動監視者は車両から離れないことも重要です。

なお、高圧ガスの「自社輸送」や「輸送時の法律」については下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

サクラ運送は高圧ガス輸送の専門業者として、毒性ガスの性質に応じた適切な輸送に対応しています。
毒性ガスなど高圧ガスの輸送についてお困りの方は、ぜひサクラ運送へご相談ください。

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